Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

十三

彼女は、さらりと言いすてゝ、座をたつた。そして、唐紙を細目にあけて、子供たちがもう眠つたかどうかをたしかめた。子供たちは手を握り合つてすや/\と眠つていた。

十三

康子はそのまゝ座へもどらず、中園の寝床をのべ、枕もとへ、水差しとコップをおき、

「では、ごゆつくり……。お服はご自分でどうぞ、あそこへおかけになつて……」

で、引きさがろうとすると、それまで部屋のすみに突つ立つていた彼は、つか/\とそばへ寄つて来て、彼女の肩へ手をまわし、くちびるを求めようとした。彼女は、一瞬、抵抗力を失つたかとみえたが、急に、かぶりを強く振つて、上半身をうしろへそらした。

「そんなの、いや……。ちやんとおつしやらなきや、いや……。あたしがほしいならほしいつて、なぜはつきりおつしやらないの。それも、第二の妻なんて、あたし、たくさんだわ。そんなもんでなくつていゝの。でも、きようはだめ、絶対にだめ……」

こう言いながら、強く抱きしめる男の腕を払いのけて、彼女は、唐紙をさつと開けた。そして、次の間から、その唐紙を静かに閉めるといつしよに、

「おやすみなさい」

翌朝、彼女は、眠不足の眼を水でゆつくり冷やし、化粧をすこし丹念にし、子供たちの起きるまでに、食事の支度をしおわつた。