Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
手あたり次第に、そのうちの一つを楽譜台の上にひろげ、軽く指を走らせてみる。練習不足はてきめんにこたえたけれども、次第に、一音が一音をひとりでに呼びさます、あの無我の境にひきいれられる。
と、不意に、彼女はひく手を止めてうしろを振り返る。
「トムちやん、もうねむいでしよう?」
祖母の肩に寄りかゝるようにして絵本にながめ入つている国民学校二年生のモトムは、
「うゝん、ちつともねむくない。ボク、じつと聞いてるんじやないか」
この返事はちよつと大人をたじたじとさせた。
「ほんと?」
と、康子は、それだけ言つて、また続ける。
義妹の百々子は、こうしてあによめにピヤノをひくようにすゝめはしたものゝ、さて、これが自分なら、おいそれとその気にはなれまいと考えていた。このことに限らず、「とくなたちだわ」と、自分とひきくらべてそう思うことはたび/\だが、これは性質の違いでどうにもならぬことゝきめている。
アパッショナタの荒れ狂うような響きが部屋をふるわせていた。
しゆうとの乃婦は、そつと両手で耳をおさえながら、「やれ、やれ、あんなに乱暴にひいてもピヤノはいたまないのかしら」