Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

こゝで夫の指にぐつと力がはいり、彼女の手はしびれるように痛かつた。彼女は何か言おうとして、くちびるを動かしたが、そのまゝ何も言わなかつた。

「まあ、おれの言うことだけ聞いて、意見があつたら言え。いゝか、おれはなあ、康子、日本が負けたことは、そんなに恥じじやないと思う。堂々と戦つて堂々と負けたのならだよ。しかし、おれは早くから軍職に身をさゝげたものゝ一人として、こんなことは言えた義理じやないが、今度の戦争ばかりは、堂々と戦つたと言いきれんのだ。なぜかと言えば、たとえ形式は天皇陛下の御命令ということになつていても、実は、軍隊というものが起つべき時に起つておらん。軍隊が起つべき時とは、軍隊が起たなければどうにもならんときをいうのだ。その時こそは、たとえ勝算なしと見ても、やるだけやるんだ。運を天にまかせるのもいゝ。しかしだよ、あらゆる点からみて、まだ/\武力に訴えなくてもすむ場合、或は、武力に訴えざるを得ないようになつた原因が、他のすべての力において故に劣つているという、そのことにある場合、軍隊を動かすことは愚の骨張だ」

言葉がしばらく途切れる。

十

「うん、愚の骨張だ……」