Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
「さ、わたしひとりで歩くから、かまわずに行つてちようだい」
と、言つた。
「どうして? まだだいぶあるに」
「いゝから、先へ行つてちようだい。ひとりでぶら/\帰りたいの」
「わしの言つたことが気に入らなんだ?」
「うゝん、ほんとはありがたいのよ。でも、急にひとりになりたくなつたの。あなたがいると、わたし、よけいなことばつかり言うから……」
「いゝじやないか、なにを言つたつて……。相手がわしなら罪はないさ。ほんとのところ、先生と話をしてると、張合いがあつていゝだ」
「そうかしら? わたし、市ノ瀬さんにはなんでも勝手なこと言えるからだわ。そういうお友達はめつたにないもの。でもね、市ノ瀬さん、わたし、もうこの村にながくはいないわ」
「学校をやめてどうするの、いつたい?」
「どうするつて、どうもしないわ。たゞこうしているより、どこへでも行きたいところへ行けたら、気がまぎれると思うの」
「だから、どこへ行つて何をするつてあてでもあるの?」
「ない。ありつこないわ。むろん家へなんぞ帰りたくないし……」
「わからないなあ。それじやまるで、放浪じやないか」
「そう、そうよ、放浪よ、放浪の旅よ」