Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

彼の場合、それが洋行帰りだからというのではない。いつたいに、明治このかた、西欧風の騎士的ギャラントリーが、いくぶんかは日本の軍人によつて学ばれていたのだ、という解釈ができぬこともないのである。

彼女は、ほかのどんな男と話をする時よりも、たとえ俗臭ふんぷんたるところはあつても、夫を除いた軍人というものにむかつた時が、一番、女としてのひけめ、被圧迫感をかんじないですむのである。そして、われながら、女の威儀というようなものに自信がもてた。

中園三郎はそういう相手のひとりだつたことはいうまでもないが、彼にはまだそれ以上、軍人のほとんどすべてに共通な、例の現実主義者の風ぼうがき薄であるというところに、彼女のゆらぐ気もちをやす/\とうけいれる半面があつたのである。

この人にならという期待が、そのまゝ、やつぱり言うべきだつたという安どとなつて、彼女の気分にある弾みを与えたのはそれゆえである。

そして、ふしぎなことに、これでもうなにもかも終つたというふうな、言いかえれば、過去の重荷をすつかりおろしたような身軽さで彼女は天竜峡行きの電車に乗りこんだ……。

木の葉の如く