Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
「でも、その浜島つていうひとの名は、おわかりになりませんの?」
「えゝ、それが……わしはたゞ、ちよつとした関係で、浜島キヨウジという――ペンネームだろうと思うんですが……」
そこまで聞くと、彼女は、思わず声をはずませて、
「浜島峡児、えゝ、それですわ、それですわ」
と、相手の方へつめよつた。そして、
「浜島峡児が浜島茂ですの。それに違いありません。詩人としてのペンネームですわ」
「へえ、そうですか。しかし、わしは会つたことはないんですよ。同じ部隊だということはわかつていたんだけれども、部隊で出していた雑誌に時々作品がのつていたもんで、覚えているんです。たしか本部の当番兵だつていうことは聞いていたんですが、そうだなあ、あれはことしの初めかなあ、ペナンのふ虜収容所へ派遣されて、そこからやつぱり雑誌へ詩を送つて来ていましたつけ。収容所のことを歌つたいゝ詩がありました」
詩などに興味をもつているだけあつて、普通の兵隊らしくないところが、言葉の調子にみえるこの相手を、北原ミユキはむしようになつかしくなつて、
「うれしいわ、そんなお話伺えて……。では、最近まで元気でおりましたんですね」