Lettura giapponese

Classici giapponesi con furigana

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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.

N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate

Aozora Bunko

そういうひと、いないかしら? あたしは、いると思うの。どこに? つておつしやれば、あたし、すぐにその人をこゝへ呼ぶわ」

そう言つて、康子は、じつと北原ミユキの横顔をみつめていた。

「異性の間の愛情つていうようなもんを、へんに神聖に考えるのはおかしいと、あたしは思うの。そりや、一面から言えば、そういうところもあるにはあるわ。つまり、ある特別な相手だから、熱烈な、純粋な愛情が生まれることも事実よ、そりや。でも、そういう愛情は、どんな心にも生まれるもんじやないつていうことも、あたしは信じてゝよ。だから、あなたにしても、そうよ。失われたのは、たゞ、愛の目あてだけで、愛そのものじやないつて言えるわ。あたしは断言するけど、いまにきつと、あなたにふさわしい相手が現われて、あなたを夢中にさせるわ。それでいゝのよ。なんにもやましいことなんかないわ。だれにも遠慮はいらないことよ。あなたがご自分さえいつわつてらつしやらなければ……」

たゝみかけるように、康子はしやべつた。しかし、北原ミユキは、まだこれという反応を示さず、石けんのあわがとき/″\顔へはねるのを、まくりあげた腕で無造作にふきとりながら、いつまでも押し黙つている。