후리가나로 읽는 일본 고전
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おうしゅうきこう
欧洲紀行
横光 利一
横光 利一의 欧洲紀行(おうしゅうきこう)을 후리가나와 함께 일본어로 읽으세요. JLPT N2. 단어를 누르면 뜻이 나옵니다.
N2 · 고급 · 신자체·신가나 · 120,107자 · 241화면
後からの氏の姿は、何もかも知り尽した温雅で善良で快活そうな老紳士である。ときどき本に書き入れをしているが、この世にこれほど楽しさはないという風に、少しそり身になったまま、頭をひねりひねり、揺れる本の上に書き難そうに鉛筆を走らせている。昨夜は私が見られた番であるから、今朝は私がよく見ようと、あかずジイドの後姿を眺めていた。読書しながらも食物を無雑作に口の中へ抛り込んでは、また書き入れに急がしそうだ。私も紅茶を飲みながら、モスコウへ近づきつつある朝の美しい曠野を眺め、ジイドを眺め、これは現世で楽しめる風景のうち、これほど興味ある風景はないと、ひとりゆっくり食事をとった。
必ずジイドはロシア紀行を発表するときが遠からずあるだろうが、それならも早や氏の頭のなかでは、ロシヤに関する何らかの明瞭な主体が、浮かんでいるころであろうと思われた。それにしても、私には受入れかねる一つの疑問が起って来てやまなかった。
いったい、フランスともあろう世界第一の文化国の、最も偉大な知性であるところのジイドが、ロシヤの精神上の植民地になろうとしている現象である。これがまともな精神世界の歴史であろうか。