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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

「蜀の国を取れば、かならず荊州は呉へ返す。――これは玄徳が、かねがね呉に向って、口癖にいっていた約束である。然るに、今、蜀四十一州を取りながら、まだ何らの誠意も示してこない。予の忍耐にもかぎりがある。いっそのこと、大軍をさしむけて、荊州をこっちへ収めてしまおうと考えるが、各※(二の字点、1-2-22)の所存はどうか」

すると、宿将張昭が、

「まだ、まだ」と、独り頭を振っていた。

孫権がみとめて、

「昭老はこのことに不同意であるか」と、問いかけた。

彼は、うなずいた。

「蜀、魏、呉の三国のうちで、いま最も恵まれている国は呉です。呉の位置です。国は安寧で、民は富を積み、兵は充分に英気を養っていられるところです。求めて大軍を起すにあたりますまい」

「しかし、このままにしておいたらいつの日、荊州が呉にかえるぞ」

「手を袖にして、荊州を取り返してご覧にいれましょう」

「そんな名案があるのか?」

「あります。――玄徳のたのみとする人物は諸葛孔明一人といっていいでしょう。その孔明の兄諸葛瑾は、久しく君に仕えて、呉にいるではありませんか。いま罪を称えて、彼を蜀へ使いに立て、もし荊州を還さなければ、孔明の兄たる筋をもって、この瑾をはじめ妻子一族は残らず斬罪に処されます――と彼にいわせてごらんなさい」