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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

三

と、侍者へいいつけ、孔明と顔見合わせて、そっと嘆息した。

彼は重い足を運んで、表の閣へ臨み、階下にひれ伏している養子の劉封をじろと見て云った。

「豎子。なんの面目があって、ここへ帰ってきたか」

劉封は、ようやく面をあげて、

「叔父(関羽)の危難を救わなかったのは、まったく私の意志ではなかったのです。その折、孟達が頑強に拒んだため、つい彼のことばにひかれ、心にもなく自分も援軍に行かなかったので」

と、そのことをいわれぬ先に弁解しだした。

玄徳は眉を怒らして、

「うるさい。そのような言い訳を今さら聞く耳はもたぬ。そちも定めて、人の喰うものを喰い、人の着る衣を着ている人間であろうに、孟達の詭弁に同意し、みすみす恩ある叔父を見殺しになすとは犬か畜生か、蔑げ果てたやつではある。起てっ、去れっ。見るもけがらわしい」

いよいよ、烈しく叱ったが、多年育てた子と思えば、私情はまたべつと見える。眼に涙をたたえ、面を横にしたきり、再び階下の子を正視しなかった。

「……まったく私の不敏です。いえ、大落度でした。なにとぞこの度だけは、おゆるし下さいまし。この通りです」

劉封は涙を流して、何十遍も、額を地にすりつけていた。