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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

武祖

一

「みなこれ、怪異のなす業、ひとつ天下の道士をあつめて、ご祈祷を命ぜられてはいかがですか」

と侍臣がいうと、曹操はなお苦笑して、

「日々千金を費やすとも、天命ならば一日の寿も購うことはできまい。況んや、英雄が死に臨んで、道士に祓をさせたなどと聞えては、世のもの笑いであろう。無用無用」

と、退けて、その後で、重臣すべてを枕頭によびあつめ、

「予に、四人の子があるが、四人ともが、みな俊英秀才というわけにもゆかない。予の観るところは、平常のうちに、おまえたちにも語っておる。汝らよくわが意を酌み、忠節を継ぎ、予に仕える如く、長男の曹丕を立てて長久の計をはかれよ。よろしいか」

おごそかに、こういうと、曹操はその瞬間に六十六年の生涯を一望に回顧したのであろう、涙雨のごとく頬をぬらし、一族群臣の嗚咽する眸の中に、忽然と最期の息を終った。――時、建安二十五年の春正月の下旬、洛陽の城下には石のような雹が降っていた。

武祖

一

曹操の死は天下の春を一時寂闇にした。ひとり魏一国だけでなく、蜀、呉の人々の胸へも云わず語らず、人間は遂に誰であろうとまぬがれ難い天命の下にあることを、今さらのように深く内省させた。