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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

藤花の冠

一

「てまえも、そう思っていました」

左慈は、ぷっと、唇から水を噴いた。嬋娟たる牡丹の大輪が、とたんに花瓶の口にゆらゆら咲いた。

藤花の冠

一

王宮の千客は、みな眼をこすり合った。眼のせいか、気のせいかと、怪しんだのであろう。

ところへ、各人の卓へ、庖人が魚の鱠を供えた。左慈は、一眄して、

「魏王が一代のご馳走といってもいいこの大宴に、名も知れぬ魚の料理とは、貧弱ではないか。大王、なぜ松江の鱸をお取り寄せにならなかったか」

と、人もなげにいった。

曹操は、赤面しながら、

「温州の果実はともかく、鱸といっては生きていなければ値打ちがない。何で千里の松江から活けるまま持ってこられよう」と、客の百官に言い訳した。

「はて、さて、造作もないのに」

「左慈、あまりに、戯れをいって客の興をみだすまいぞ」

「いや、ほんとですよ。釣竿をおかしなさい」

左慈は、一竿を持って、欄の外へ、糸をたれた。玄武池の水は、満々とそよぎ立ち彼の袖がひるがえるたびに、たちまち、大きな鱸が何尾も釣りあげられた。

「大王、何尾ほど、ご入用ですか。松江の鱸は」

「左慈、汝の釣ったのは、みな予が池に放しておいた鱸だ。