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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

二

すこし気分が悪いと呟いてすぐ寝殿へ入ってしまったのである。

間もなく、あたふたと、侍医がそこから退がってきて、

「どうも、お熱が高い」と、眉をひそめながら薬寮へ入って行った。

時々、寝殿の帳から、譫語が洩れてきた。そのたびに、侍臣が駈けこんで、枕頭をうかがっていると、曹操は眦をあげて、

「梨の木の怪神はどこへ行った」とじろじろ見まわした。

侍臣が、そんな者はおりませんというと、曹操はつよく首を振って、

「いや、真っ白な衣を着た怪神が、梨の精だと名乗って、幾たびも予の胸を圧した。探してみろ」

と、云い張って肯かなかった。

二

翌る日はなお頭痛を訴えてやまない曹操であった。時折、梨の木の怪を口走ることも前夜と同じなのである。

侍医はあらゆる薬餌を試みたが、病人の苦悩は少しも減じない。そして日の経るに従って、曹操の面には古い壁画の胡粉が剥落してゆくように、げっそりと窶れが見えてきた。

めずらしく今朝はすこし気分が快いらしく、曹操は、見舞に来た華とはなしこんでいた。華※(「音+欠」、第3水準1-86-32)は、

「侍医の百計も、験がないと御意遊ばすなら、いま金城に住居すると聞く華陀をお召しになってごらんなさい。