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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

成都鳴動

一

と、玄徳へ注意した頃には、すでに荊州から戦況をもたらす早馬が日夜蜀へ入ってきた。けれど、それは皆、勝ち戦の報ばかりだったので、玄徳もむしろ歓んでいると、やがて秋十月の一夜、彼は机に倚ってうとうとと居眠っているところを、王妃の呉氏に呼び起され、今ふと見た夢に、慄然とあたりを見まわした。

成都鳴動

一

宮殿の廂をこえて、月の光は玄徳の膝の辺まで映している。妃は、燭が消えているのに気づいて、侍女を呼んで明りをつけさせながら、

「どうなさいましたか」

と、玄徳の側へ寄った。

「いや、几に倚って、独り書を読んでいたのだが……」

と、玄徳は呟いたが、すぐ自分の言葉を自分で否定するように、

「何か、わしの唸き声でも聞いたか」

と、反問した。

「ええ、うなされておいでになりました」

と、妃は微笑んで、二度までも大きなお声がしたので、何事かと見にきたのですと云った。

「そうか。ではいつか居眠って、夢でもみていたのだろう」

玄徳もようやくわれに返ったような笑顔を燭に見せた。そして和子たちを呼んで妃と共にしばらく興じていたが、やがて寝所に入った。

ところがその夜の明け方、彼はまたも、宵にみた夢と同じ夢を見た。