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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

鹿と魏太子

一

帝の鸞駕を拝すや、孔明は車から跳びおりて、

「畏れ多い」と、地に拝礼し、伏していうには、

「臣、不才にして、遠く征き、よく速やかに平ぐるあたわず、多くの御林の兵を損じ、主上の宸襟を安からざらしむ。――まず罪をこそ問わせ給え」

「否とよ、丞相。朕は、御身の無事を見るだに、ただもううれしい。あれ扶けてよ」

侍従に命じて抱き起させ、また帝みずから御手をのばして、鸞駕の内に孔明の座を分けあたえられた。

幼帝と、丞相孔明と、同車相並んで、満顔に天日の輝きをうけ、成都宮の華陽門に入るや、全市の民は天にもひびくよろこびをあげ、宮中百楼千閣は、一時に、音楽を奏して、紫雲金城の上に降りるかと思われた。

が、孔明は自己の功を忘れていた。吏に命じて、従軍中の戦死病歿の子孫をたずねさせ、漏るるなくこれを慰め、閑有っては、久しく見なかった農村へ行って、今年の実りを問い、村の古老、篤農を尋ね、孝子を顕賞し、邪吏を懲らし、年税の過少を糺すなど、あらゆる政治にも心をそそいだので、都市地方を問わず、今やこの国こそ、楽土安民の相を、地上に顕観したものと、上下徳を頌えない者はなかった。

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