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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

二

「えっ?」

王必は仰天した。

さては、こよいの叛乱は、金が張本人だったかと、初めてさとったので、

「いや、門違いした。ご免」

と云い捨てるや否、倉皇と馳け出して、こんどは、曹休の邸へ行った。

曹休の郎党は、みな物具をつけて、戸外に整列し、火の手を見ながら、主人の命を待っていたところである。

「王必が、血まみれになって来ました」

と、家人の取次ぎに、曹休はすぐ彼に会った。そして仔細を聞き取ると、

「それは容易ならぬ計画のもとに行われた仕事に違いない。すぐ宮中へ行って、帝の御座を護れ」

と、居合わす一族と郎党をひきいて、火の粉の降りしきる下を禁門へ向って馳け出した。

二

市中といわず、禁門の中といわず、火の狂うところには、

「逆、曹賊を殺して、順、漢室の復古を扶けよ」

という声があった。

また、諸声あわせて、

「死ねや死ねや。漢朝のために――」

と、悲壮な叫びが聞えた。

けれど、曹休をはじめ、曹氏の一族は、市街に戦い、禁門に争い、これもまた、命を惜しまず、叛乱兵と斬りむすび、よく宮中を守っていた。

かかるうちに、火は東華門から五鳳楼へ燃えてきたので、帝は御座所を深宮に遷され、ひたすら成行きを見まもっておられた。