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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

四

四

関平と趙累の二将が、関羽の先に立って、まず北門附近の呉兵を蹴ちらし、主従二百騎、ひたすら山へ向って走った。

麦城の北に連なる峨々たる峰の背さえ越えれば、道は蜀に通じ、身は呉の包囲の外に立つ。

「そこまでの辛抱ぞ」

「そこまでは敵の伏兵に出合っても目をくれるな。ただ追い散らせ、ただ急げ」

合言葉のように云い交わしながら関羽を守り囲んだ同勢は、やがて初更の真っ暗な山の細道へ登りかけた。

――がしばらくは、出で合う敵もなく、草木を揺がす伏兵の気ぶりもなかった。

一山を越えて、また次の一山を迎えた。その間は西方の沢が裾をひいて、まるで漆壺のような闇の盆地を抱いている。淙々として白きは水、岸々として高きは岩、関羽や関平の駒は幾たびも石ころや蔓草につまずきかけた。

すると突然、前面の沢からチラチラと無数の火が見えた。左の山からも一団の炬火が馳け下ってきた。右の峰からも、さらに後ろのほうからも、火光はここに集まって、やがて天を焦がすばかりの火となった。

「呉兵だ」

「伏兵だぞ」

すでに矢風は急雨のごとく身辺をかすめていた。

かねての覚悟、関羽は偃月刀を馬上に持ち直して、