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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

三

夢だったのである。

「どうなさいました」

父の声に、養子の関平が来てたずねた。夢ではあったが、猪に咬まれたあとが、まだズキズキ痛むような気がするといって――関羽は苦笑した。

「猪は龍象のうちと申しますからきっと吉夢でしょう」と、関平はいったが、幕僚のうちには凶夢ではあるまいかと、ひそかに案じる者もあった。しかし関羽は、

「人間五十に達すれば、吉夢もなし、凶夢もなし。ただ清節と死所にたいして、いささか煩悩を余すのみ」と、いって笑った。

三

曹仁の大兵は、怒濤となって、すでに襄陽へ突入したが、

(関羽が全軍をひきいて、荊州を出た)

という情報に、にわかにたじろいで、襄陽平野の西北に物々しく布陣して敵を待っていた。

魏の進撃が、思いのほか遅かったのは、曹仁が樊城をたつときから、参謀の満寵と夏侯存などのあいだに、作戦上の意見に齟齬があって、容易に出足が一決しなかったためである。

で、たちまち関羽軍は、襄陽郊外に来て、彼と対陣した。

魏の元は、荊州の廖化へ挑んで、この戦の口火をひらいた。

一鼓一進、たがいに寄って、歩兵戦は開始され、やがてやや乱軍の相を呈してきた頃、廖化は偽って、敗走しだした。