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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

そのときこの蜀の名将二人を一席に殺して、たちまち兵馬を蜀中へ向け、一挙、水関を占領してしまう。これは中策と考えられます」

「む、む。もう一計は」

「ひとまず、兵を退いて、白帝城にいたり、荊州の守備を強固となし、心しずかに、次の段階を慮ることこれです。……が、これは下策に過ぎません」

「……下策はとりたくない。また第一の案も急に過ぎて、一つ躓けば、一敗地にまみれよう」

「では、中計を」

「中庸。それは予の生活の信条でもある」

日を経て、成都の劉璋の手許へ、玄徳の一書がとどいた。それには、呉境の戦乱がいよいよ拡大して来たことを告げ、荊州の危急はいま援けにゆかなければ絶望になる。まこと本意ないが、葭萌関には誰か良い蜀の名将をさし向けられたい。自分は急遽、荊州へかえると――認めてあった。

「それみい、玄徳はかえるというて来たではないか」

劉璋はかなしんだ。

しかし、反玄徳勢力は、ひそかに胸で凱歌を奏している。

ひとり悶えたのは、大勢をここまで引っ張ってきた張松である。彼の立場は当然苦境に落ちる。

「そうだ」

邸に帰ると、張松は、筆をとって、玄徳へ激励の文を書いた。折角、ここまで大事をすすめながらいま荊州へ引揚げては、百事水泡に帰すではないか。