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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

元来、城を発するとき、二将は玄徳の前で、あらかじめ作戦の方針を聞き、

(黄忠は敵の冷苞に当り、魏延は賢の陣を突破する)

と約束してきたのであるが、ここに来てから魏延の思うらく、

(それだけでは、さまでの功ともいえない。自分一手で、冷苞の陣も破り、続いて、※(「登+おおざと」、第3水準1-92-80)賢の軍も粉砕して、老黄忠の鼻をあかしてくれねばならん)――と。

そこで彼は、にわかに、陣払いの時刻を早め、道もかえて、黄忠の進むべき左の山へ進路をとった。

夜どおし山を踏み越えてゆくと未明に敵陣が見えた。

「見ろ。敵は霧の底にまだ眠っている。一気に蹴やぶれ」

どっと、山を離れて、敵営へ迫った。

「来たか、魏延」

思いがけなくも、敵は八文字に営門をひらいて、堂々、彼の軍を迎え一斉に弓鉄砲を撃ちだした。

冷苞はその中から馬をすすめて魏延に決戦を挑む。望むところと魏延は大いに戦ったが、そのうちに後方から崩れだした。

「はて?」と、気をくばってみると、不覚不覚、山路のほうから敵の伏兵が現れたらしい。いつのまにか魏延の隊は腹背ともに攻め鼓につつまれていた。

「南無三」

魏延は冷苞を捨てて野の方、五、六里も逃げ退いた。