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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

第三、第四、第五、第六――というふうに、一瞬のまにその烽火が次々の空へと走り移って、数百里の遠くの異変も、わずかなうちにそれを本城で知り得るという仕組なのである。

この「つなぎ烽火」の制は、日本の戦国時代にも用いられていたらしい。年々やまぬ越後上杉の進出に備えて、善光寺平野から甲府までのあいだを、その烽火電報によって、短時間のまに急報をうけ取っていたという川中島戦下の武田家の兵制などは、その尤なる一例であったということができる。

「着々、工事は進んでいます。――あとは人の問題ですが」

王甫はやがて襄陽へ戻ってきて、関羽に告げた。

「江陵方面の守備は、糜芳、傅士仁のふたりですが、ちと、如何と案じられます。荊州の留守をしている潘濬も、とかく政事にわたくしの依怙が多く、貪欲だといううわさもあって、おもしろくありません。烽火台はできてもそれを司る人に人物を得なければ、かえって平時の油断を招き、不時の禍いを招く因とならぬ限りではありませんからな」

「……うむ。……人は大事だが」

関羽は生返事だった。自ら選んで留守をあずけ、或いは江岸の守備に当らせた以上、その者を疑う気にはなれない彼である。