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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

そのとき魏の中軍では、さかんに退き鉦を打ち叩いていた。※(「广+龍」、第3水準1-94-86)徳は意外に思ったが、何か後方に異変でも起ったのではないかと、ともかくあわてて軍を収め、中軍司令の于禁に向って、

「どうしたのです。何が起ったのであるか」と、訊ねた。

ところが于禁の答えは、彼にとって実に心外きわまるものだった。彼はいう。

「いや別に何が起ったというわけではないが、都を立つ時、特に魏王から戒めのお使を派せられ、関羽は智勇の将、尋常の敵と思うて侮るなと、くれぐれ念を押されたことであった。ゆえに、万一彼の奸計におち入ってはと存じ、部下の者の深入りを止めたまでのことである」

※(「广+龍」、第3水準1-94-86)徳は歯ぎしりを噛んでいた。于禁のため今日の勝機を逸しなければ、関羽の首を挙げ得たものをと、くり返して止まなかった。

また一部の将の間には、それは于禁が自分の功を※(「广+龍」、第3水準1-94-86)徳に奪われんことを怖れて、急に退き鉦を鳴らさせたものだと、穿った説をなす者もあった。

ともあれこの一日に、関羽は一箭の傷をうけたわけであるから、