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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

荊州城にあった関羽の一族は、呂蒙のさしずによって鄭重にほかのやしきへ移され、不安なく不自由なく呉軍に保護されているのを見て、荊州の人民は、

「ありがたいことだ」と、呂蒙の名を口から口へささやきつたえた。

呂蒙は日々、五、六騎の供をつれて、みずから戦後の民情を視て歩いた。一日、途中でにわか雨にあったが、雨に濡れながらもなお巡視をつづけて来ると、彼方から一人の兵が、百姓のかぶる※笠を持って、の上にかざしながら、一目散に馳けてくるのを見かけた。

「捕えろ。あの兵を捕えてこい」

呂蒙は鞭をさし向けた。

二頭の騎馬武者が雨中を馳けて、すぐその兵を引っ吊して来た。見るとその兵は呂蒙もよく顔を知っている同郷の男だった。

――が、呂蒙はその兵を睨まえて云った。

「自分は日頃から、同郷同姓の者は殺さずという誓いを持っていたが、それは私事で公務の誓いではない。汝はこのにわか雨にあって百姓の笠を盗んだ。高札の表に掲げてある一条を犯した以上は、たとえ同郷の者たりとも法を紊すわけにゆかん。首にして街へ梟けるから観念するがよい」

兵は仰天して、雨中に哀号しながら、呂蒙を伏し拝んで、