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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

女々しいとは知りながら、凡情いかんともなし難い」

「お察し申しあげます。けれどお嘆きあるばかりで、ご無念の容子がないのは不思議です」

「無念やる方なければこそ、人に面を会わせずにいるのに、軍師にはなぜそのような咎めをなすか。見よ、誓って、呉と日月をともにせず、呉にこの報復を与えずにはおかん」

「その御心さえしかと肚にお据えなれば、いつまで綿々嫋々と、婦女子の涙を真似ている秋ではございますまい。――以後次々と、また今朝も、府内に早馬が新しい報をもたらして来ていますが、帳を閉して深くお籠り遊ばしているため、情報官もそれを御前へ披露に及ぶ由もなく、みな困っておりまする」

「悪かった。改めよう」

「今朝の情報では、呉は関羽の首を魏へ送り、魏ではそれを王侯の礼をもって国葬に附したということです」

「呉の意は何にあるのか」

「わが蜀の怨みを怖れ、魏へ禍いを転嫁して、蜀の鉾を魏へ向けさせんとする企みです」

「たれか、そのような、欺瞞に乗せられようぞ。予は速やかに出陣する。そして呉を討ち、関羽の霊をなぐさめよう」

「甚だよろしくありません」

「なぜだ? たった今、予の涙を、婦女子のようだと叱ったご辺が、そのことばを為すは、矛盾であろう」