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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

――ところが。

ここに蜀にとって悲しむべき一事件が突発した。それは張飛の一身に起った不測の災難である。

あれから中の自領へ急いで帰った張飛は、すでに呉を呑むごとき気概で、陣の将士に、

「すぐ出陣の用意をしろ」と令し、また部下の将、范疆、張達のふたりを招いて、

「このたび討呉の一戦は、義兄関羽の弔い合戦だ。兵船の幕から武具、旗、甲、戦袍の類まで、すべて白となし、白旗白袍の軍装で出向こうと思う。ついては、おまえ達が奉仕して、三日のあいだにそれを調えろ。四日の早天には中を出発するから、違背なくいたせよ」と、いいつけた。

「……は」とはいったが、ふたりは眼をまろくした。無理な日限である。どう考えたってできるわけではない、とすぐ思ったからだった。

けれど、張飛の性質を知っているので、一たん引退がって協議してみた。そしてふたたび張飛の前に来て、

「少なくも十日のご猶予を下さい。とうてい、そんな短時日には、できるわけがございません」

と、事情を訴えた。

「なに、できない」

張飛は、酒へ火が落ちたように、かっと青筋を立てた。側には、参謀たちもいて、すでに作戦にかかり、彼の気もちは、もう戦場にある日と変りないものになっていたのである。