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さんごくし

三国志(七)

吉川 英治

吉川英治『三国志(七)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:三国志、三国志。

N1 · 挑战 · 新字新假名 · 371,916 字 · 744 页

青空文庫

これはまったく馮習や張南のめぐらした計略なので、未然に、使いの通るのを察していたためである。

とも知らず、その夕方、朱然は大軍を船から上げて、すでに進もうとした。しかし大将崔禹は、

「どうも、少しおかしい。一士卒のことばを盲信して、これだけの行動を起すのは、ちと軽率です。都督にはやはり水軍を守ってここにいてください。それがしが行きますから」と注意した。

朱然も、げにもと思い直し、自身は水軍にひかえて、崔禹に計をまかせ、一万足らずの兵をあずけた。

案の如く、二更の頃、孫桓の陣に、猛烈な火の手が揚がった。火攻めのあることは、昼のうちに朱然から通じてあるものとしていたが、その使いが、その途中で斬られていることまでは崔禹も思い到らなかった。

「それ援けに行け」と、にわかに急ぐと、途中の森林や低地から待っていたとばかり伏兵が起った。張苞、関興ふた手の軍勢だった。

崔禹は生捕られ、部下は大打撃をうけて、なだれ帰ってきた。朱然は周章して、その晩のうちに船手の総勢を、五、六十里ほど下へさげてしまった。

一度ならず二度まで敗北した孫桓は、陣営ことごとく敵に焼かれて、無念のまなじりをあげながらやむなく夷陵の城(湖北省・宜都、宜昌の東北)へ退却した。