Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(七)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(七) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 350.912 Zeichen · 702 Bildschirme
四
とのみいったきりで、大地へ面を伏せていた。
そしてじっと――武蔵は全身でその人の一言を待っていたが、いつまでも、実にいつまでも、答えはなかった。
武蔵は待ちきれず、こよいこそは、抱懐の疑義を糺そうものと、いいかけると、
「聞いておる」
愚堂は初めて、口を開いて、
「又八坊から、毎晩のように、聞いておるので万承知じゃ。……女子のことも」
終りの一句に、武蔵は、水をかけられたここちだった。面も上げ得ずにいた。
「又八、棒切れを貸せ」
愚堂はいって、彼の拾った棒切れをうけ取った。武蔵は、頭上に下る三十棒を観念して、眼をふさいでいたが、棒は彼の頭には来ないで、彼の坐している外を、ぐるりと駈けて廻った。
愚堂は、棒の先で、地へ大きな円を描いたのである。――その円の中に、武蔵の姿は在った。
四
「行こう」
と、棒を捨てた。
そして愚堂は、又八をうながして、すたすた歩み去った。
武蔵はまたも、取り残された。岡崎の場合とちがって、ここに至ると、彼も憤然とした。
数十日のあいだ、真心と、惨憺たる苦行をこめて、教えを乞おうとする末輩に、余りにも、慈悲がない。無情酷薄だ。いや、ひとを弄びすぎる!