Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
十
「よい気味! ……もうびくともせぬわ。――出来したぞよ伜。やれやれこれで胸のつかえが半分はさがったというもの。故郷の衆へ幾分か面目が立つわいのう。……又八、これ、どうしたぞよ。はよう首を斬れ、お通の首を揚げい」
十
「ホ、ホ、ホ」
婆は、息子の小胆をわらいながら、
「――意気地ないやつ。人間ひとり斬ったくらいで、肩で息をつくようなことでどうするぞ。汝が身に首が掻けぬなら、婆が首を揚げてくれる。――そこを退きゃい」
前へ出ようとすると、自失したように棒立ちになっていた又八の手が、握っている刀の柄頭で、いきなり老母の肩をどんと突いた。
「――わっ、な、なにしやる」
あぶなく、婆も底のわからない灌木の中へ腰をつこうとしたが、辛くも足元を支え止めた。
「又八、汝が身は、気でもちごうたのか。老母に向って――なんたることをしやる」
「おふくろ!」
「……なんじゃア?」
「…………」
異様な声を、鼻と喉の境に呑みころしながら、又八は、血のついている手の甲で眼をこすった。
「……おら……おらあ……お通を斬った! お通を斬った」
「賞めてやっているではないかよ。――それをなんで汝が身は哭くか」