Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
「武蔵どの」
崖下の農家は真っ暗な竹むらに囲まれていて、どこかで水車の音がするが、その流れさえよく見えない。
「しまったッ!」
水を飛んで、小次郎は向う側の崖の上へすぐ出てみた。人影らしいものは見あたらない。白河あたりの寺院の屋根、森、眠っている大文字山、如意ヶ岳、一乗寺山、叡山――広い大根畑。
それから月が一つ。
「しまったッ。卑怯者め」
小次郎は武蔵が逃げたなと直覚した。あの落ちつきすましていた様子もそのせいであったかと今にして思う。道理で余りいうことも出来過ぎていた。
「そうだ、早く」
小次郎は身を翻して、元の道へ出た。そこにも、武蔵の影はない。彼の足は宙をとんで駈け出した。――勿論、一乗寺下り松へ真っ直に。
木魂
一
――遠く遠く、見ているまに駈け去って小さくなって行く佐々木小次郎の影を見送って、武蔵は思わずにたりと笑った。
たった今、その小次郎が立っていた所に、武蔵は立っているのである。なぜ、彼があんなにも捜したのに知れなかったのかを考えてみると、小次郎は居場所を捨てて他を捜したが、武蔵はかえってその小次郎のいたすぐ後ろの樹蔭に来ていたからであった。