Japanische Klassiker mit Furigana
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みやもとむさし
宮本武蔵(五)
吉川 英治
Lesen Sie 宮本武蔵(五) (みやもとむさし) von 吉川 英治 (よしかわえいじ) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 508.883 Zeichen · 1017 Bildschirme
すると、その切ッ先の行方も分らぬほど――だあんッ――と横手の障子に、その人間は飛んで行った。
重い風呂敷づつみのように投げつけられた人間は、ひッと一声呻いた限り、障子とともにもんどり打って、外の闇へ転がり落ちた。
投げつけたせつな、武蔵はその曲者の体重が軽いのではっと思った。猫ほどしか重量のない曲者なのである。それに布で顔は包んでいたが、髪の毛も麻のように白かったし……。
だが、彼はそれには一顧もしないですぐ枕元の太刀をかかえ、
「待てっ」
と縁を飛び降り、
「折角の訪れ、ご挨拶を申すであろう。お返しなされ」
いいざま、大股に駈けて、闇の跫音を追いかけた。
しかし本気で追う気ではないらしく、乱れあって彼方へ散って行く白い刃影や法師頭巾の影を嗤ってすぐ引っ返して来た。
八
投げつけられた弾みに、ひどく体を打ったのであろう、お杉婆は大地に呻いていた。武蔵が戻って来たとは知ったが、逃げることも起つこともできなかった。
「……アッ。おばばではないか」
武蔵は抱き起こしてみた。
自分の寝首を狙いに来た首謀者が、吉岡の遺弟でも、この山の堂衆でもなく、老いさらぼうた同郷の友の母であったことは、彼にも意外であったとみえる。