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Japanische Klassiker mit Furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme

Aozora Bunko

お延はそのプログラムを狂わせた自分を顧みて、むしろ幸福だと思った。気がかりを後へ繰り越すのが辛くて耐らないとはけっして考えなかった。それよりもこの機会を緊張できるだけ緊張させて、親切な今の自分を、強く夫の頭の中に叩き込んでおく方が得策だと思案した。

こう決心するや否や彼女は嘘を吐いた。それは些細の嘘であった。けれども今の場合に、夫を物質的と精神的の両面に亘って、窮地から救い出したものは、自分が持って来た小切手だという事を、深く信じて疑わなかった彼女には、むしろ重大な意味をもっていた。

その時津田は小切手を取り上げて、再びそれを眺めていた。そこに書いてある額は彼の要求するものよりかえって多かった。しかしそれを問題にする前、彼はお延に云った。

「お延ありがとう。お蔭で助かったよ」

お延の嘘はこの感謝の言葉の後に随いて、すぐ彼女の口を滑って出てしまった。

「昨日岡本へ行ったのは、それを叔父さんから貰うためなのよ」

津田は案外な顔をした。岡本へ金策をしに行って来いと夫から頼まれた時、それを断然跳ねつけたものは、この小切手を持って来たお延自身であった。一週間と経たないうちに、どこからそんな好意が急に湧いて出たのだろうと思うと、津田は不思議でならなかった。