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Japanische Klassiker mit Furigana

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めいあん

明暗

夏目 漱石

Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.

N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme

Aozora Bunko

彼の二階には無論火が点いていなかった。玄関も真暗であった。今角の車屋の軒灯を明らかに眺めて来たばかりの彼の眼は少し失望を感じた。彼はがらりと格子を開けた。それでもお延は出て来なかった。昨日の今頃待ち伏せでもするようにして彼女から毒気を抜かれた時は、余り好い心持もしなかったが、こうして迎える人もない真暗な玄関に立たされて見ると、やっぱり昨日の方が愉快だったという気が彼の胸のどこかでした。彼は立ちながら、「お延お延」と呼んだ。すると思いがけない二階の方で「はい」という返事がした。それから階子段を踏んで降りて来る彼女の足音が聞こえた。同時に下女が勝手の方から馳け出して来た。

「何をしているんだ」

津田の言葉には多少不満の響きがあった。お延は何にも云わなかった。しかしその顔を見上げた時、彼はいつもの通り無言の裡に自分を牽きつけようとする彼女の微笑を認めない訳に行かなかった。白い歯が何より先に彼の視線を奪った。

「二階は真暗じゃないか」

「ええ。何だかぼんやりして考えていたもんだから、つい御帰りに気がつかなかったの」

「寝ていたな」

「まさか」

下女が大きな声を出して笑い出したので、二人の会話はそれぎり切れてしまった。