Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
湯に行く時、お延は「ちょっと待って」と云いながら、石鹸と手拭を例の通り彼女の手から受け取って火鉢の傍を離れようとする夫を引きとめた。彼女は後ろ向になって、重ね箪笥の一番下の抽斗から、ネルを重ねた銘仙の褞袍を出して夫の前へ置いた。
「ちょっと着てみてちょうだい。まだ圧が好く利いていないかも知れないけども」
津田は煙に巻かれたような顔をして、黒八丈の襟のかかった荒い竪縞の褞袍を見守もった。それは自分の買った品でもなければ、拵えてくれと誂えた物でもなかった。
「どうしたんだい。これは」
「拵えたのよ。あなたが病院へ入る時の用心に。ああいう所で、あんまり変な服装をしているのは見っともないから」
「いつの間に拵えたのかね」
彼が手術のため一週間ばかり家を空けなければならないと云って、その訳をお延に話したのは、つい二三日前の事であった。その上彼はその日から今日に至るまで、ついぞ針を持って裁物板の前に坐った細君の姿を見た事がなかった。彼は不思議の感に打たれざるを得なかった。お延はまた夫のこの驚きをあたかも自分の労力に対する報酬のごとくに眺めた。そうしてわざと説明も何も加えなかった。