Japanische Klassiker mit Furigana
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めいあん
明暗
Lesen Sie 明暗 (めいあん) von Natsume Sōseki (夏目 漱石) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 322.590 Zeichen · 645 Bildschirme
二人を案内したらしい風呂場の戸の開く音が、向うの方でした。かと思うと、また津田の浴槽の入口ががらりと鳴った。
「今晩は」
四角な顔の小作りな男が、またこう云いながら入って来た。
「旦那流しましょう」
彼はすぐ流しへ下り立って、小判なりの桶へ湯を汲んだ。津田は否応なしに彼に背中を向けた。
「君が勝さんてえのかい」
「ええ旦那はよく御承知ですね」
「今聴いたばかりだ」
「なるほど。そう云えば旦那も今見たばかりですね」
「今来たばかりだもの」
勝さんはははあと云って笑い出した。
「東京からおいでですか」
「そうだ」
勝さんは何時の下りだの、上りだのという言葉を遣って、津田に正確な答えをさせた。それから一人で来たのかとか、なぜ奥さんを伴れて来なかったのかとか、今の夫婦ものは浜の生糸屋さんだとか、旦那が細君に毎晩義太夫を習っているんだとか、宅のお上さんは長唄が上手だとか、いろいろの問をかけると共に、いろいろの知識を供給した。聴かないでもいい事まで聴かされた津田には、勝さんの触れないものが、たった一つしかないように思われた。そうしてその触れないものは取も直さず清子という名前であった。