Classici giapponesi con furigana
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
Leggi 火の扉 (ひのとびら) di 岸田 国士 (きしだくにお) in giapponese con furigana. JLPT N2. Tocca una parola per il significato.
N2 · avanzato · kanji e kana moderni · 129.467 caratteri · 257 schermate
三
――よし、お前の言うことは聞くだけ聞いたから、もういゝだろう。ところで、おれの決心に変りがないとすれば、お前はたゞ、おれの妻として、それ相応の覚悟をしてもらわにやならん。もともと軍人のところへ来た以上は、それくらいの心構えはあつて然るべきだが、おれは、その点、ちよつと不安でなあ。あと/\のことを、遺書にする前に、あらかじめ相談しておきたいと思つたのだ。
彼女は、もう口をはさむ勇気はなかつた。すると、夫は、道ばたのナラの枯枝をポキリと折つて、例の問いをだした。
――お前は、おれの最期を見とゞけたあと、いつたいどうするつもりだ?
三
彼女には、この、夫の問いの意味がどこにあるかをたしかめる気さえしなかつた。
「そんなこと、お返事できませんわ。第一、あたくしは、あなたのおつしやること、ぜつたいに承認していないんですもの。承認しろとご命令になるんでしようけれども、あたくし、そればかりは、妻として、母として、いゝえ、女として、ぜつたいに承認いたしません」
それは実にきつぱりとした彼女の宣言であつた。
「そうか。それならしかたがない。お前をこゝへ呼んだのはむだだつた」