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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
「駕籠にいるのは誰だろう?」
一人の杣夫が不思議そうに云う。
「いったいどこへ行くのだろう?」
するとお吉が手で招いた。
「七面岩へ上るのだよ! 皆さん手つだいに来ておくれよ! 険しい険しい七面岩、女だけでは上れそうもない。さあさあ手つだいに来ておくれよ」
「お吉が呼んでる、行こう行こう!」
で、杣夫が十二三人、駕籠の後を追っかけた。
「あっ痛い! 爪を剥がした!」
石につまずいたかお紺という六文、足の指を抑えて縮んでしまった。駕籠はドンドン走って行く。
「おお痛い! おお痛い!」
渋面を作っているところへ、ピョイと一つの人影が、灌木の蔭から飛び出した。アテなしに道人を探しに出た、蝮捕り姿の組紐のお仙、
「おや、お紺さんどうしました?」こういいながらも不思議そうに、行き過ぎた駕籠を見送った。
「ああお前さんはお仙さんだね、痛くて仕方がない、爪を剥がしてね。……これというのもお前さんのセイだよ」
「何を云うのさ、お紺さん。どうして妾のセイなんだろう?」
「そうともそうともお前さんのセイさ、宗さんなんていういい男を、妾達の所へ連れて来たので、お吉さんがすっかり岡惚れしてね、山駕籠に乗せてたった今、道人様のお住居の方へ、妾達まで供に連れ、案内して行ったというものさ。