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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
浜路の酒場の一光景
今日で云えばバラック建て、がんけんに作られた食卓や腰掛け、飾りらしい物は一つもない。
浜路の酒場の一光景
この日も酒場は賑わっていた。
「六文六文と馬鹿には出来ねえ、昨夜買った六文なんか、そりゃあ素的な味だった」
「ははあさてはもてやがったな」
「星一つねえ真っ暗の晩だ、顔や姿は解らなかったが、すべっこい肌ったらなかったよ」
「ところが、そいつを昼間拝むと、鼻の欠けた化物だってね」
「うんにゃそれがそうでねえ、俺もそいつが心配だったので、真っ先に顔を撫でて見たやつよ。するとどうだ、鼻はあった。もっとも唇はとろけていたが」
「俺らの買った六文はな、比丘尼あがりの女と見え、ツルツルに頭が禿げていたっけ」
「なんの婆さんを買ったんだろう」
「それも瘡毒が頭へ来て、毛の脱けた奴かもしれねえぜ」
「そうは云っても六文の中にも、お吉のような女もある、そうそう安く扱えめえ」
「あっ、お吉か、ありゃあ別だ」
「立兵庫にお襴、島原へ出したってヒケは取るめえ」
「それに気象が面白いや」
「たとえ山巡りのお役人さんでも、厭だと一度首を振ったら、金輪際諾かねえということだ」
「俺らの手には合わねえってものさ」