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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
黒気の立った方角へ
鼻下にも顎にも粗髯があったが、おそらく手入れをしないからであろう、ヒョロヒョロとして見立てがない。がそれがかえってその人物を、一層上品にみせるのである。
「ご覧よ、松前」とその人物、空を仰いだが云ったものである。「太微恒の五帝星座を、不吉な赤気が貫いているよ。五諸侯星座が動揺している。おっ、いけない流星がした。ね、東北の方面へ。……ふふむ、どうもよくないなあ」
東北の空を眺めやった。
しかし門下の松前という武士には、まだ天文未熟のためか、五帝座を貫いている不吉の赤気も、五諸侯星座の動揺しているのも、観望することが出来なかった。
だがいったい儒者風の人物、どういう身分の者だろう。
黒気の立った方角へ
儒者風をした高朗たる人物、その門下らしい松前という若武士、林を通して空を仰ぎ、しばらく天体星の相を、まばたきもせず見ていたが、
「ここは見にくい、外へ出よう」
儒者風の人物歩き出した。
林の外に丘がある。そこへ上った二人の者、今は遮る物もない、晩夏初秋の夜の空を、ふたたび仰いで眺めやった。
「ね、ご覧」と儒者風の人物、「五帝座の中心黄帝星が、幸臣星のために犯されようとしている。