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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

南蛮渡来の眠薬かな

南蛮渡来の眠薬かな

旅用の金を二三百両、まとまって欲しいと切り出され、志水幹之介ベッタリと坐った。

「八重梅!」と云ったが息を呑む。「百両は愚か十両の金、今の俺にはままにならぬ!」

怖そうに見上げたものである。

「いいえ」と云ったが水のような声だ。微動さえしない荻野八重梅、「ある所にはございます。ご無心をしていらっしゃい」

ジ――ッと眼を据えた幹之介、「辻斬りしろと教えるのか!」

「何んの幹様、この不景気に、百両二百両袖に入れ、人間夜道を通りましょうか」

「うむ、それでは押し借りか!」

「忍び込むには手間がいる、つかまったら縛り首、妾と逢うことも出来ますまい」

「頼む、八重梅、教えてくれ!」

「ねえ」と云うと手を上げた。グッと※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)し込んだは帯の中、取り出したは薬包み、島津太郎丸の書面から、さっきこぼれたそれである。そっと畳へ押しやったが、「眠剤でござんす、これを使って!」

「眠剤? そうか! どうするのだ?」不安におびえた声である。

「拝借なさりませ、お手もと金!」

「何を!」と云うとフラフラと立った。