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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

艶かしい八重梅の部屋

……銭貰いなら往来でやりねえ。小屋の裏口へ乗り込むなんて、小屋者の作法に外れていらあ。出ねえ、出ねえ、うしゃッがれ!」

「ああお宝かえ、お宝のことかえ?」こう云うとヒョイと烏組のお紋、袖から小粒を取り出した。「妾もうっかりしていたよ、早く上げりゃアよかったにねえ。……さあさあお取り、遠慮はいらない。……ところで太夫はおいでかね」

「へいへいおいででございます」

「それじゃアこいつを渡しておくれな」懐中から書面を取り出したが、この頃八重梅は自分の部屋で、女弟子を相手に話していた。

艶かしい八重梅の部屋

ここは八重梅の部屋である。

女役者の部屋だけに、万事万端艶かしい。衣桁には赤い衣がかかっている。開荷にも赤い衣が詰まっている。円型大鏡の縁も台も、燃え立つばかりの朱塗りである。ちらばっている座布団にも、赤い色が染め抜いてある。鬘台に置かれた鬘にも、赤いキレがかかっている。

その真ん中に片膝を立て、話しをしている八重梅の手には、朱羅尾の煙管が保たれている。

大目蝋燭が四本がところ、部屋の中を明るく照らしている。その焔先がチラチラする。と、部屋の中のあらゆる物が、それに連れてチラチラする。