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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

最後の階段から何を見たか?

と呼ぶ声が背後でした。振り返ってみると男の姿、萩原仁右衛門が立っていた。

「おや先刻のお客様で」

「おおこれは蝮酒屋の……」

仁右衛門意外に感じたらしい。

「若いお女中が一人身で、こんな寂しい森の中へ、何と思って参られたな?」

「はい」と云ったが組紐のお仙、相手が真面目らしい人だったので、「尋ねる方がございまして、それで参ったのでございます」

「ああさようで、それはそれは、実は私も尋ね人があって、それで参ったのでございますがな、うかと提灯を持って来ず、閉口をしておるところ、ご迷惑でなくばその提灯、ちょっと貸してはくださるまいか」

「いと易い事でございます。さあさあお使いなさいまし。……あのそうしてお尋ねなさる方は?」

「薬草道人と申してな、御岳から参った医聖でござる」「まあ、そうでございましたか。それでは妾と同じこと、妾も薬草道人様を、さがしているのでございます」

最後の階段から何を見たか?

蝮酒屋の給仕女が、薬草道人を探していると聞き、萩原仁右衛門案外に思った。

「それはそれは似たような話で。どういうご用でお探しかな?」

「はい」と云ったが組紐のお仙、まさか恋人を探すツテに、薬草道人を探すのだとは、心が咎めて云えなかった。