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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

蝮酒屋を焼き討ちにかける

縁があって裏庭がある。「庭の様子を見てやろう」下駄を突っかけた荻野八重梅、音を立てずに歩き出した時、

「八重梅さん、八重梅さん」

板塀の向こうから声がした。聞き覚えのあるお紋の声!

塀へ身を寄せると荻野八重梅、

「ああお紋さんでございますか?」

「ちょっと様子を見に来ました」

「首尾は上々、お話しましょう」

「簡単にね、急いでね」

蝮酒屋を焼き討ちにかける

塀の内外でお紋と八重梅、こんな調子に語り合った。

「浜路はいるでございましょうね?」こう訊いたのは烏組のお紋。

「はい」と云ったのは八重梅である。

「水戸の鷺組の連中は?」

「最近江戸へ引き上げましたそうで」

「この家の主人弥五郎は?」

「大須へ行って今は留守」

「宗三郎と仁右衛門は?」

「城の表門と裏門へ」

「何んのために?」と烏組のお紋。

「薬草道人こっそりと、出立するという事でしてね」

「いい事を聞いた、大成功! で、お仙は? 大蛇使いの」

「店でチョコマカ働いています」

「で、どうだろう、八重梅さん、浜路を外へ連れ出せまいか?」

「さあそいつだが、むずかしそうで。あのいい躯、貫目もあろう、とうてい妾の力では、引っ担いで行くということもならず」