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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
薩州島津家の烏組
やがて桟橋までやって来た。
「命をからむ蔦葛――芭蕉さんが名句を吐いた所だ。いい景色だな、絶景だ。こういういい景色を眺めれば、誰だって歌を句をつくりたくなる。だが景色があんまりよいと、景色まけがしてよいものが出来ない。命をからむ蔦葛、これ以外にはこれといって、桟橋をうたった名句がない。そのくせ文人墨客ども、きっとここへ来ると旅硯を取り出し、何か彼かむやみにひねくるのだがな」
中仙道を下って行く。平和な平和な旅であった。だが薬は売れなかった。
やがて名古屋の入口にあたる、勝川の宿までやって来た。もうその時は夕暮れで、燈火が家々に点きはじめたが、どうしたものか薬草道人、「あぶないあぶない逃げろ逃げろ! それ剣気、それ殺気!」こう云いながら家蔭に隠れ、じっと往来を窺った。十数人の人影が、名古屋の方へと歩いて行ったが、新規の事件の湧き起こる、その主人公の一群である。
薩州島津家の烏組
名古屋へ進んで行く十数人の人影、いずれも女で黒ずくめ、闇の申し児と云いたげである。ただし尋常な旅装い、もっとも歩き方がいささか異う。特に大跨に歩くのでもないが、ひどく速力が速いのである。