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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

一人は英雄一人は仙

「うむ」というと尾張宗春、胸を反らして快活に笑った。「云ってもよいかな、余の本心を!」

「どうぞ」というと眼を垂れた。

「余こそお前を活用したものだ」

「さよう!」と道人手を拍った。

「単に私は木賊の役、殿が名玉でありましたゆえ、光を発したのでございます」

「だが道人、お前は仙だ」

「では」と道人微妙に笑った。

一人は英雄一人は仙

微妙に笑った薬草道人、

「私が仙でございましたら、では再び山へ隠れ、鳥や獣を相手とし、くらしをしなければなりますまい。事実私は人界を去り、山へ入るつもりでございます」ここでじっと宗春を見た。「それに反して殿は英雄!」

「ではいつまでも人界に住み、人間のために尽くさなければなるまい」

「さようでございます。事業をなされて」

「破壊ではなくて、建設的事業!」

「それが大事でございます」

「艱難はむしろ余の方に多い」

「人間を相手でございますからな。……殿は艱難に堪えられましょう。また堪えなければなりません」

「道人」というと尾張宗春、なつかしそうにしんみりと続けた。「お前と別れたら寂しくなろうよ」

「殿!」と道人は慰めるように、「そうでなくとも人主というものは、寂しいものでございます」