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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

隣りの牢屋にいる者は

しかし宗三郎は答えなかった。不意に声に出して云ったものである。「水路の舟にいたあの老人、薬草道人に相違ない!」

だがいったいどういうところから、そういう断定が出来たのであろう?

隣りの牢屋にいる者は

「水路の舟にいたあの老人、薬草道人に相違ない!」

宗三郎のこう思ったには、大した理由はないのであった。衣裳がひどく穢いにも似合わず、容貌が非常に立派であったことと、あんな場合にあんなことをして、宗春を突然助けたことが、超自然的人物に思われたことと、薬草道人と懇意なお吉が、一緒に舟の中にいたことと、そんなようなことを取り合わせてみると、どうやらあの時の老人が、薬草道人に思われるのであった。

「何んのためにお吉が名古屋へ来たか、これは見当が付かないにしても、あの時の姿から推し計れば、やはり私娼をしているらしい。それも最下等の私娼らしい。首尾よくここを逃げることが出来たら、最下等の私娼の巣窟を訪ね、お吉に逢って様子を聞こう、道人様のおり場所を教えてくれるに相違ない」

こうは考えたが宗三郎、どうしてここを遁がれたものか、その思案がつかなかった。

「山影様」とお絹が云った。