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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
露路の細道駒下駄で
「それじゃア首尾よくなさりませ」
「一生懸命!」と志水幹之介、釣られたように立ち上がった。
連れて立ち上がった荻野八重梅、つと寄り添うと腕をのばし、幹之介の肩へ打ちかけたが、
「これが今生の一締めさ!」心で云ってグーッと締め、頬ヘピッタリ頬をあてた。
「八重梅!」と締め返して幹之介、「暁の鐘の鳴る頃には……」
「待っております。おいでなさりませ」
「うむ、そうしてどこで待つ?」
「ここは人目にかかります、そうですねえ、浅間の社地で」
「そこから一緒に他国だな」
「通し駕籠で東海道、江戸をさして行きましょう」
「よし」
と云うと幹之介、障子を開けて縁へ出た。フラツク足を踏みしめ踏みしめ、行ってしまったその後は八重梅一人になったのである。
ジーッとすだく虫の声、萩の下辺から聞こえて来る。河東節は聞こえない。三味線の音も音を絶えた。中庭に灯る石燈籠、明滅をする燈の光、蛾がパサパサとぶつかるらしい。
「では妾も御輿を上げ、そろそろ宿へ帰ろうか」
門まで行くと声をかけた仲居。
「あの、お供を呼びましょう」
「いいえ歩って帰ります」
「表は物騒でございますよ」
「ナーニね」と云うと荻野八重梅、微妙に笑ったものである。