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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

病床に横仆わる宗三郎

「個人に罪なし、浮世が悪い」ふと道人は呟いた。「おおそうそう」と憂わしそうに、「切り合いがあったという事だの。死んだ者は仕方がない。怪我人だけは助けずばなるまい。膏薬膏薬、彦兵衛さんや、山窩さん達に膏薬をおやり。まだ何んだか喋舌りたいが、夜も深い、止めだ止めだ。そうして何んだ、実際のところ、喋舌る奴に限って実行しない。で、あんまり喋舌らぬがいい。……もうよかろう、さあさあ出発」

「お渡り!」

という童子の声! レキ、レキ、レキ、ロク、ロク、ロク! 薬剤車が軋り出し、人間鳥獣の一行列、粛々として動き出した。

「ハイハイ、おさらば、ハイおさらば」

道人気軽に歩を運ぶ。

次第に遠退く松火の火。「お渡り!」とまたも童子の声! レキ、レキ、レキ、ロク、ロク、ロク! 轍の軋りも遠のいてゆく。

病床に横仆わる宗三郎

レキ、レキ、レキ、ロク、ロク、ロク、轍の音は尚きこえる。

後を見送った浜路と山窩、眼に涙を宿している。丘を巡ったか松火が消えて轍の音も消えた時、はじめて山窩達は立ち上がった。

「さあさあ酒場の浜路さん、馬にお乗りなさいまし。萩原までお送りいたしましょう」山窩、叮嚀に云ったものである。