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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
待ち伏せして連れ参れ
「そこへ参られたは烏組の方か?」いかめしい男の声である。
「さよう」とお紋即座に云った。
「お迎えに参った、ご案内いたす」
「用意万端、よろしゅうござるかな?」
「整いおります。いざご案内」
一行森へはいったが、そのまま姿が見えなくなった。
その翌日の真昼である。名古屋城の天主閣、そこの窓から一人の武士、望遠鏡で市中を眺めていた。
「これは」と呟くと首を延ばし、じいいっと見入ったものである。
待ち伏せして連れ参れ
じいいっと望遠鏡で見入っている武士、年齢三十前後であって、蒼白い顔色、鋭い眼、しっかり結んだ薄い唇、叛骨あり気の角張った頤、美男ではあるが狂気じみている。葵の紋服の着流しで、黄金づくりの小刀を手※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)み、刀を小姓に持たせている。この人は誰? 尾張宗春! 六十一万九千五百石、尾張名古屋の城主である。何故じいいっと見入っているのか? 精巧な望遠鏡にありありと、一人の美人が映ったからである。小造りの痩身で、黒の振り袖スンナリと立ち、ぼんやり濠の水を眺めている。と顔を振り向けた。うんと切れ長の細い眼が、剃刀のように輝いたが、何んという妖艶! 笑ったものである。