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にんきょうにとうりゅう

任侠二刀流

国枝 史郎

「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页

青空文庫

斬ってかかった数人の武士

「これ、何者、人違いをするな! 拙者山影宗三郎、水戸家の藩士、当地では旅人、怨みを受ける覚えはない!」闇を通して窺った。

敵は正しく武士姿、無言でジリジリと付け廻して来る。大した手利きでもなさそうだ。

「おかしいなあ」宗三郎、刀も抜かずに思案した。「ははあさては物取りかな? それとも尾張家の悪侍の、酔狂の果ての辻斬りかな? どっちにしても物騒な奴だ」もう一度声をかけて見た。

「これこれお武家、理由を云わっしゃい! 辻斬りならば悪戯に過ぎる、懲しめのため、ぶっ払う! 物取りならばお気の毒だ、大して金子も持っていない。それとも遺恨の闇討ちかな? どうだどうだ、理由を云わっしゃい!」

やっぱり無言、ただジリジリと、敵の侍付け廻して来る。

「うるさい奴だな、嚇してやろう。肩のあたりを、峰打ちに一つ!」

で、宗三郎スッと抜いた。ヒョイと柄を一捻り、峰を上に片手上段、例によって左手をブラブラ遊ばせ、しばらく様子をうかがった。

「行くぞよ」と云うと宗三郎、一歩どころか一息に、スルスルと五、六歩進み出た。

ギョッとしたらしい敵の侍、なだれるように退ったが、掛け声もなく飛び込んで来た。