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にんきょうにとうりゅう
任侠二刀流
国枝 史郎
「名古屋新聞」1926(大正15)年5月24日~12月26日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 224,569 字 · 451 页
宗三郎を傷むお仙の涙
宗三郎はどうしたろう? どうなったか解らない。
雲切れがして星が出た。
と、唄い声が聞こえて来た。
「恋しいお方はおりませぬ」
組紐のお仙だ、お仙の声だ。
人影がポッツリ現れた。
「怖かったこと怖かったこと! ド――ンと鉄砲の音がして、沢山の人が逃げてったよ。戦争でもあったんじゃアないのかしら? アラ何んだろう? 人が寝ているよ! アッ、死骸だ! まあ気味が悪い! おやここにも! おやここにも! 厭だねえ、恐ろしいわ! 逃げよう逃げよう早く逃げよう!」
大岩の方へ走って来た。と死骸へつまずいた。
「いやだねえ、また死骸だよ」
雲切れがして月が出た。
「アラ!」と叫ぶと組紐のお仙、死骸の傍へベッタリと坐った。
「山影さんだヨーッ、宗さんだヨーッ」
確り抱きかかえたものである。
宗三郎を傷むお仙の涙
「山影さんだヨ……、宗さんだヨ……」こう叫んだ組紐のお仙、ひしと宗三郎を抱きかかえた。これは悲しいに相違ない。
江戸から遙々追って来て、邂逅ってみれば死骸である。病気ではない切り死にだ。こういう憂き目に会うほどなら、江戸にいた方がよかったろう。
「ああ妾はどうしよう?」